1000文字ジャストで作られた短い小説です。


手作りハンバーグ

「せっちゃん、ご飯うちで食べていきなさいよ」
 彩音《あやね》ちゃんのお母さんが、晩ご飯を勧めてきた。彩音ちゃんも「一緒に、ねっ!」って笑顔で誘ってくれた。
 悪いような気持ちはあったけど、今日はお母さんが仕事で遅くなるから、帰り際にコンビニの弁当を買って、家でチンしたものを一人で食べる事になっていたので、誘いはとても嬉しかった。だから、元気に「うん」ってうなずいた。
「じゃあさ、ハンバーグを焼くから。食べたいだけ取っちゃって」
 ハンバーグの材料をよく練り混ぜた、山盛りの具が入ったボウルを渡してくれた。
「食べる分だけ取るんだよ」
 彩音ちゃんは「私は2つなの」と、ボウルから中身を取ってそれを半分に分けた。「こうやると美味しくなるんだよ」って両手でキャッチボールするように行き来させながら形を整えていった。
 私はねばねばしたハンバーグを大きめに取って、彩音ちゃんの見よう見まねで形を作った。柔らかい粘土と遊んでいる気分になった。これが口の中に入る食べ物になるなんて、頭では分かっていても、驚いてしまう。
 私たちの作った生のハンバーグを、彩音ちゃんのお母さんは熱したフライパンの上に載せていった。ジューと、いい音をさせて、油が飛び散った。
「お母さん、わたしのチーズを入れてね」
「はいはい。せっちゃんも入れる?」
「……うん」
 私の意識はハンバーグを焼いたフライパンしかなかった。蓋をされてしまい、中身はよく見えなかったけど、ハンバーグが焼き上がるのを最後まで見続けていた。


 今日はお母さんと一緒の日だった。
「ハンバーグ作って」
「なんでよ?」
 めったにしない私のわがままに驚きながら、面倒くさそうに答えている。
「ハンバーグねぇ。確かあったわね」
 そういって、冷蔵庫を開けてごそごそと探している。
「あったわ。ハンバーグできるわよ」
 取り出したのは、電子レンジを使えば簡単にできてしまうレトルトのハンバーグだった。
「そんなんじゃなくて、お母さんのが食べたい」
「なんでよ」
 嫌な顔をする。
「雪凧《せつな》は知ってるでしょ。お母さんは料理ヘタなのよ。私が作るよりも、こっちのほうが、簡単で、とっても美味しいの。ほんといい時代になってくれたわ」
「違うもん」
「何が違うのよ。美味しい方がいいじゃない」
 お母さんは冷凍食品の袋を開けて、凍ったハンバーグを取り出した。
「違うもん……違うもん……そんなの違うもん……」
 私はそう呟くしかなかった。


『チームバラエティーな部屋』
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