1章・2章を読んでない方は>>
3章「鍋の正しい洗い方知ってるか?」

では、一体どんな教え方をしているのか、当然ながら興味が湧く。

「まず、何も言わずに生徒さんに作ってもらうんや。こっちは手をださへん。わからへんとことかは教えるけどな。で、出来上がってから、それを俺が手直ししてあげるんや」
なるほど。
でもそれでは、初心者には難しいのでは?

「いや、初心者の方がいいんや。変な癖がないから吸収が早い。失敗はしたらええんや。失敗できる料理教室なんかないやろ?」
確かに。
そのような料理教室は珍しいだろう。
普通は失敗しないようにレシピがあって、それ通りに作るものである。

しかし、先生の教室の場合は、そうではない。
お品書きと材料があって、生徒それぞれが自分で考えて、作る。
多少のアドバイスはありつつも、基本的に先生は口をはさんでも手は出さない。

できあがりをみて、先生がそれを一つ一つ評価する。
どこをどうしたから、こうなった。何を入れすぎたからこういう味になった。
もうちょっとここをこうしたら、もっとよくなる。
それを教えてくれる。

料理は結果が全てだが、それに至るまでのプロセスがあり、そのプロセスには一つ一つ、意味がある。
なぜ塩を入れるのか、なぜ弱火にするのか。
なにげなくやっていることも意味があるのである。
先生の料理教室ではそのことから、教えてくれる。

「鍋の正しい洗い方知ってるか?」
そう言われたが、わからない。

「そんなん教えてくれる料理教室、ないやろ。うちは教えるで」

人のレベルに応じて、必要なことを、必要な時に教えてくれる。
失敗は失敗として、そこから学んでいく。
料理の技術だけでなく、人間としても成長できる料理教室といえるかもしれない。

4章「失敗してもええねん。俺がなおしたる」

「失敗したらええねん。そこからいろいろ学ぶからな。恥はかかなあかん」
そう先生はおっしゃるが、では失敗した時にはどうなるのか?

「うちの教室では、失敗したものは俺がなおしたる。だから、『完全に失敗』というのは、うちではないよ」
そんなことができるのだろうか?

いや、できるのだろう。
その言葉には、ハッタリではない、本物の力強さと余裕があった。
いろんな食材・調理法・調理器具を極めてきたという裏づけがあるからこそ、言える言葉である。


「油と酢を間違って入れても、俺はなおせるよ。違う料理にアレンジするかもしれんけどね」
普通の料理教室なら、捨ててしまうところである。

「失敗した時にどうするか。それが一番重要やろ。レシピどおりに作るだけなら、うちの教室にこんでもいい」
そこまで言い切ることが出来るのは、自分の腕に全幅の信頼を置いているからだろう。

「たまに、電話で『失敗しました』っていうて来る人もいる。それには口頭で解決策を教えるよ。次回の教室で教える、やったら遅いやろ。意味がない。その時に教えてあげないと」
そして、それがプロや、と断言された。
これまた納得である。
取材というよりは、講義を受けているような形になってしまった。
料理人として、というよりは、一人の人間として、しっかりとした芯をもたれている方である。

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