突然ですが、盛岡で『わんこそば』を食べてきました。

 今回は、胃袋の限界に挑戦した一人の男の軌跡をお届けします。


 店に到着したのは、昼の12時少し前。お店には、すでにお客が8割方入っており、奥の席ではうず高く積み上げられたお椀に囲まれながら、猛烈な勢いでそばを掻き込む同士の姿が。

 予想以上の激しさに少し戸惑いながらも『わんこそば』を注文する。すると、しばらくすると、目の前に、『わんこそば』のつゆをあける桶と共に、マグロやとろろ、なめこおろし等の薬味が並ぶ。
 また、ふたをしたカラのお椀があり、このお椀に投入されるそばを食べること、このお椀にふたをすることで『わんこそば』は終了となること、といった簡単な『わんこそば』の説明があり、いよいよ激闘の火蓋は切って落とされるのであった。

 私のテーブルには、他にも初老の男性2名もチャレンジしており、お給仕さんの「じゃんじゃん」、「もう一杯」といった威勢の良い掛け声と共に各自のお椀にそばが投入されていく。
 早速、自分のお椀に投入されたそばを見ると、一口半くらいのサイズで至って普通のそばである。恐る恐るそばをすすってみると味も普通のそばであった。(讃岐うどんのような暴力的なコシがあっても困るのだけれども。。)

 息つく暇もなく、3人がそれぞれ5杯ほど食べると、「おかわりお持ちします」とお給仕さんは奥の厨房に戻り、小休止となる。第1R終了である。
 テンポとしては、3杯目くらいまでは、掛け声に合わせてそばを消化していけるが、4杯目あたりから少し苦しくなり、何とか5杯目まで持ち込んで、おかわりを待つ間に次のラウンドに備えて態勢を整えるといったスピード感である。

 そんな状況で45杯くらいまでは、平穏にこなしていく。(さすがに飽きてくるので、薬味で味は変えていく。) 15杯でかけそば1杯ほどらしいので、かけそば3杯といったところである。

 ところが、50杯を越えたあたりから、次第にスピードが鈍り出す。しかも、ここで、最初の危機が訪れる。

 戦友の初老男性Aがギブアップしたのである。
 座席の関係上、いつも先陣を切っていた彼も『わんこそば』のプレッシャーについに屈してしまったのである。

 今までの3人協業体制は崩壊し、1ラウンド5杯から、1ラウンド8杯と一気に1.6倍のノルマ増大である。
 これが仕事なら労働組合を通じて、抗議したいところである。

 こうなるとかなり苦しくなり、最初の頃のようにテンポ良く食べることはできなくなる。
 小休止に入ることを期待しながら、カラのお椀を突き出すも、「おかわりお持ちします」という言葉はなく、お椀に、3口くらいはありそうなそばが投入された時には、軽い失望感を味わうこととなる。
 もはや、「味わう」という気持ちはなく、「根性」や「忍耐」という領域である。




 大幅なペースダウンをしながらも70杯近くまで来るが、ここで再度、危機が訪れる。

 そう、もう一人の戦友である初老男性Bもギブアップしてしまったのである。

 こうなると状況はかなり苦しい。1対1での対決の上、ノルマもさらに倍増である。
 今すぐ、辞表を叩きつけてやる。といった感じである。

 心が折れそうになりながらも70杯を超え、さらに記録を伸ばすが、さすがに限界が来てしまう。

 一気にお椀の中身をすすり、終了の合図であるふたに手を掛ける。
 しかし、その刹那、「もう一杯」の掛け声と共にお椀にそばが。。
 少しでもスキを見せると終了することはできないのである。(ギブアップしているのに審判に止めてもらえないプロレスラーみたい。。)

 若干の殺意を覚えながら、最後の力を振り絞ってそばを掻き込み、今度こそ、一気にふたをする。ようやく、長きに渡る死闘の終了である。

 デザートのフルーツを頂いている間に(デザートがあるなんて聞いてない!)、お給仕さんにお椀を数えてもらう。

 結果は81杯。目標としていた100杯には届きませんでした。。


 もはや食事というよりも、スポーツや根性比べといった趣もありますが、皆さんも一度、自分の限界にチャレンジしてみませんか?


※きっとこの店では、お給仕さんのパート募集広告には、「責め好きな人」という条件を載せているに違いない。